部下育成の方法を学ぶための研修は世の中に存在しています。例えば、コーチング、積極的傾聴法、ほめ方・叱り方、ソーシャルスタイルなどなど、色々とありますね。(→ ソーシャルスタイルに関するブログ記事へ)
そういった類いの研修は、接し方、つまり「how to do」を学ぶものです。
その接し方が、組織にとって本当に意味や価値のあるものと言えるのは、やること、つまり「what to do」が正しいときです。
正しい「what to do」なんて、受講者が一番分かっているはずだと思っているかもしれませんが、そうでない場合が多いのではないかと私は見ています。
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例えば、あるメーカーで営業マネジャーに向けた「コーチング研修」を実施したとしましょう。
研修で学ぶ主な内容は、部下に内省を促すための質問方法や傾聴方法といったスキルでした。「how to ask」や「how to listen」について時間をかけて学びました。
受講したマネジャーの皆さんの反応も上々で、研修終了時には「さっそく部下に対して実践しよう!」という機運でした。
このメーカーでは、主力商品であるAの売上が近年頭打ちになっており、新商品Bの売上を3年間で倍増するという販売戦略を掲げています。つまり、「商品Bの拡販」がこの会社の正しい「what to do」になります。
ところが、現場は長年売り慣れている商品Aを優先的に売りがちで、業績評価も商品Aであろうが商品Bであろうが、とにかく売上総額が達成できればOKということになっています。これでは、正しい「what to do」は実践されません。
研修で学んだコーチングも、現場では「いかに商品Aの売上を伸ばすか/維持するか」という点での会話で活用されているようで、「商品Bをどうやって拡販するか」という点での会話においてコーチングを用いることは稀なようです。
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どうでしょうか。
これでは、せっかく学んだ「how to do(=コーチング)」が組織にとって正しいこと(=商品Bの拡販)に繋がっていませんので、研修を実施した意味や価値は生まれていないと判断せざるを得ません。
このブログで何度か言っていますが、経営(組織成果)に資さない研修に意味はありません。ましてや、人手不足で、誰もが超多忙な毎日を過ごしていることを考えますと、経営(組織成果)との繋がりが担保されない研修はやるだけ無駄です。生産性を低下させるだけです。
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私の経験上(自省を込めて言いますが)、コーチングに限らず、研修で学ぶ「how to do」が、正しい「what to do」と連動し、経営に資するものになっていないケースが世の中には多いのではないでしょうか。
研修を企画する部門が、その点にどこまで配慮しているのか・・・。そこまで気が回っていない可能性を感じます。外部コンサルタントや研修ベンダーに発注する際、そこまで考えて相談・要望・依頼をしているでしょうか。
外部コンサルタントや研修ベンダーも、相談や依頼を受ける際に、クライアントの正しい「what to do」を理解しようとしているのでしょうか。そして、研修時に「what to do」を踏まえて、学びの場を提供しているでしょうか。
「how to do」を提供される側(受講者)はスキルを欲しがる傾向があります。以前、私が外部コンサルタントだったとき、受講生から「具体的なやり方を教えてほしい」という言葉をよく聞いたものです。
「how to do」を提供する側(外部コンサルタントや研修ベンダー)は、受講者から求められていることに快感を覚え、気持ちよく「how to do」を提供し、悦に入りがちではないでしょうか。
かくして、研修の場は「how to do の王国」と化します。
要注意です。学びの際に、常に正しい「what to do」を想起させないといけません。
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経営に資する「what to do」は必ず存在しています。
そして、その「what to do」について考えるときに注意することがあります。それは、
■ 短期的視点のことばかりでなく、中長期視点のことを考えること
■ 財務視点ばかりでなく、ビジョン・ミッション・バリューのことも考えること
■ 業務の進捗ばかりでなく、従業員のキャリア形成支援を考えること
■ 目先の出来事ばかりでなく、期初に立てた目標(業務目標&能力開発目標)を起点に考えること
です。
「Aばかりでなく、Bを」の、Bのほうに関して、従業員だけでなくマネジャーも失念しがちですので、それらを意識させる配慮と施策が必須です。
「how to do」だけでなく、合わせて、正しい「what to do」を念頭に置きながら学びの場を提供すること。
単に「how to do」を学ぶだけの研修はもう止めましょう。