1社しか経験のない人は、自社のことを客観的には分かっていない
これまでに1社しか勤務経験がないことの Disadvantage や Risk が気になります。それは、
所属先のクリティカルな問題点を心底は感じられない
と思うからです。
現在、どこの会社でも変革が急務です。そして、変革を進めるうえでよく参考にされる「変革の8段階」というプロセスがあります(→ 「変革の8段階」の説明:グロービスさんのサイトへ)。
その1段階目は「危機意識を高める」です。つまり、当事者に「まずいっ!」と思わせることが変革のスタートになるということです。
人材や組織、文化といったソフト面の変革に関しては、この「まずいっ!」という感覚を、1社しか勤務経験のない人たちは、心底は持てないのではないかと思います。
※人事部門は、ソフト面の変革推進を業務としているので、多少は危機意識を持っているはずです。
長い期間、同じ会社に所属していれば、人材、組織、文化といった面で何らかの自負を持っていると思われます。知名度のある会社であれば尚更。その自負が邪魔をして、危機意識が持てないのではないでしょうか。
例えば、「うちの会社は昔から人を大事にしている」とか「うちの会社は人材がそろっている」というようなことを言う会社は多いですが、私はこう考えます。
× どこの会社だって似たようなことを言っているが、客観的な指標がない(自分たちが勝手に言っているだけ)
× 競合他社との比較で、それがどんな価値を生んでいるのか不明
× 結局、ビジネス成果が出ていなければ、そんなのは戯言を言っているに過ぎない
× 人を大事にしているからって、その人たちがずっと高いパフォーマンスを出し続けられるとは限らない
いかがですか。
他の会社を知らないことが原因で、自分たちが一番、自分たちは優秀、自分たちなら乗り越えられる、などと勘違いし続けているように見えます。(人事部自体がそのような感じだと、その会社はオワコンです)
まさか自分が成長の阻害要因(の一部)になっているだなんて思いもしないでしょうし。入社以来、そのような組織の中で時間を過ごしていますと、自組織が環境不適合を起こしている状況下にあっても、「会社/組織/職場/上司/仕事なんて、まあこんなものだ」と、それらが競争劣位を起こしている要因だなんて感じられないのかもしれません。
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プロパー社員の比率の高い組織での苦悩
上記したような会社へ、変革を推進することを期待され、意気揚々と中途入社してくるミドルマネジャーは、さぞや苦労の多いことでしょう。
本来、人材、組織、文化の変革を支援するはずの人事部門も、プロパー入社の方々が重要ポジションを握っているとすれば、様々な組織課題に対して、心の底では「仕方がない/どうしようもない」と諦めや無力感を感じている可能性を感じます。ですので、中途入社のミドルマネジャーを真剣に応援するようなことはなく、及び腰なスタンスなのではないでしょうか。
これでは変革が進みませんね。
以下に、変革を起こし、進めるために工夫している事例を書きます。
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突撃!隣の課長会
私は仕事柄、現場のミドルマネジャー(部長・課長)との接点が多いです。ご多分にもれず、彼らは大きな責任(と小さな権限)、過負荷な業務量、骨の折れるメンバーたちを抱えながら、日々悩み、奮闘しておられます。
そこで、そんな皆さんをどうにか少しでも楽にしてあげたい、堂々とマネジメントできるように支援したい、部長・課長という役割に充実感を持てるようにしてあげたいと思い、様々な施策を検討・企画し、少しずつ実施しています。
最近実施しました新たな施策に「合同課長会」なるものがあります。
これを企画・実施したのには2つの理由があります。
1つ目の理由は、変革を推進するためです。そこで、特に1社しか勤務経験のない課長(以下、プロパーマネジャーと呼称)に他社のこと(風土、組織運営、課長としての仕事ぶり)を自ら聞いてもらい、自社と自分に関して内省してほしいと思ったからです。
具体的には、他社の課長と話して、自社の特徴(強み・弱み、傾向、風土など)、自分のマネジメントの特徴を自覚してもらい、変革への動機づけや変革すべきポイント、自らの成長課題を持ち帰ってもらうことを理想と考えていました。
2つ目の理由は、話題の著書『罰ゲーム化する管理職』の中で、”罰ゲーム”と比喩されるこの状況を修正するためのアプローチの1つに「ネットワーク・アプローチ」が挙げられており、他者とのつながり(社会関係資本)の構築が状況を緩和・解消するのに有効とされていたからです。
参考図書:小林祐児 著『罰ゲーム化する管理職』インターナショナル新書 2024年
著者の小林氏は「社会関係資本の構築」について3種のネットワークを提言しています。その中の1つである「水平型」のネットワークづくりのための施策として、3か月に一度、社内の課長が有志で集まる場「課長会」を用意し、悩みを共有したり、学んだり、知恵の交換をしています。
そして今回実施したのは、「越境型」と呼ばれるネットワークづくりの施策として、他社の課長さんとの学習の場を用意しました。
さて、反応・効果はいかに。
「水平型」のネットワークづくりを狙いとした通常の「課長会」ですが、キャリア入社のマネジャーとプロパーマネジャーが対話をする良い機会になっています。
日常業務を離れて、普段は話すことのない部署の課長さんと、例えば人材育成に関して対話をする。そこに、プロパーマネジャーの思想とキャリア入社マネジャーの思想の違いが出て、対話が盛り上がる瞬間を何度も見ています。
プロパーマネジャーにとっては、自社の当たり前が少しおかしいという点に気づくようです。
少し残念なのは、プロパーマネジャーどうしの対話だと予定調和となりがちなことです。
今回やりました「越境型」のネットワークづくり「合同課長会」は予定調和で落ち着くような場にはならないです。こちらの課長さんも、他社の課長さんも、真剣に相手の会社のことを聞き、自社のことを伝え、違いや共通点を話していました。
プロパーマネジャーの皆さんが他社の人たちと話をすることで、自社に存在する変革点を発見したり、自覚したり、それを自社のキャリア入社マネジャーとの対話を通じ、手を携えて変革をリードする役目を担う。今後、そんな動きが出てくること/広がっていくことを期待しています。
また「合同課長会」では、会社(や業界)は違えど、課長という役割の悩みは似ているということも確認できたようです。それにより、頑張ろうと思えたとか、勇気をもらえたとかいう発言もありました。副次的効果です。
今後の課題
せっかく出会った他社の課長さんと1回だけの接点であれば、社会関係資本の構築にはなりづらいですので、罰ゲーム化した管理職の状況を修正していくためには今後のフォローアップをやっていかないといけません。
※今回ご一緒した会社さんとは、あと2回の「合同課長会」を予定しています。
それに、プロパーマネジャーとキャリア入社マネジャーの繋がりを深め、変革の起こしていくためにも「水平型」のネットワークづくりとの連動も考えていく必要があります。
今回の施策をきっかけに、変革を起こす起点づくり、現場の課長さんが自信とやりがいを実感すること、マネジメントスキルの習得、それらにつなげていくこと。それが私の課題です。
そして、課長向けだけでなく、部長向けにも「越境型」のネットワーク構築の機会を用意することも検討してみたいと思っています。
このような取組にご興味・ご関心のある他社の人事部門の方がおられましたら、ご連絡をお待ちしております!!